Wand Story
magical wandカゲユの制作にあたり
そのパーツをリーディングしていたとき
この物語は息を吹き返しました
悠久の時を経て
再び出会った「カゲユ」と
ワンドのパートナー「ユギ」
その物語を紐解くことで
何が起きるのか
何に気づくのか
それが貴方がこれから出会う
Essence Jewelryと貴方との間にも
既に起きている共振へと導くものかもしれません
reading by えんじ
《第一話》
ぼくらの住む世界ではね
出会うべき存在と出会えた時
「(共鳴り、共成り、友成り)ともなり」と言う現象が起きるんだよ。
それは心の底から湧き上がる喜びの波と光の粒が出会った二人の間で
幾何級数的に増えることで起きるんだ。
君たちの地球でも 同じような「ともなり」が起きてるんだけど
今の君たちは極端に感度を下げて生きることを選択しているから
なかなか気づけないだけなんだ。
ぼくとぼくの使い手「ユギ」の出会いも
ある雪降る静かな朝だった。
ぼくは ある大きなサンザシの木の枝だった。
すっかり葉も落として 冬支度を終えたぼくは
その日も 枝先に僅かに残っていた実を啄みに来ていた小鳥たちの
他愛も無いお喋りで もうすぐぼくが立っている街道に
一人の若い旅の魔道士がやってくることを知ったんだ。
その報せを聞いた瞬間 ぼくの中の何かが変わっていくのを感じて
細胞のひとつひとつがブツブツと目覚めていくような
不思議な感覚に襲われたんだ!
それから半刻後 魔道士のユギが現れた。
魔道士お決まりの大きなとんがり帽に
沢山の魔道具や薬草なんかがつまってパンパンのリュックサックを背負い
簡素な草木染めの衣服を纏った若い青年が
ぼくを目指して真っ直ぐに歩いてきたのを見た瞬間
ぼくの、いやぼくと彼の間に起きた喜びの爆発はすごかった!
周囲がキラキラと輝いて
春の日差しのような温かな空気に包まれたのを感じたよ。
小走りにやってきたユギは満面の笑みを浮かべて
ぼくにそっと触れた。
もうその時にはぼくはすっかり変容を遂げていて
長年ぼくだったサンザシの樹とお別れする準備が整っていたから
ユギがほんの少し力を加えただけで
ぼくは一振りの木の棒になったんだ。
それからユギはぼくを丁寧に磨き
必要な布や石や術式を合わせた。
そしてぼくは「カゲユ」という新しい存在に生まれ変わったんだ。
もう気づいた人もいるかもしれないけれど
ぼくらの惑星では
ことばに特別な意味とチカラが幾重にも重なってあることが知られていて
魔法の源にもなっているんだけど
そのお話はまた今度…
《第二話》
今日は言葉のチカラ、名前の魔法について
ぼくたちの住む世界では
君たちの世界よりほんの少しだけ
「ことば」や「名前」のチカラについての理解が進んでいるんだ。
ぼくの名前は「カゲユ」
ぼくたちの星で
「創始の力を強力に放ち、生命の力を沸き出すもの」
という意味があるよ。
その他にも
影 陰 加減 陽炎 下弦...
沢山の意味があるんだ。
宇宙全体で奏でる壮大なオーケストラの中より
ぼくの中心から奏でる響きを読みとって
カタチにしたものが「名前」
とある賢者によると
その名前の「音」をじーーっと見つめると
ちょうどミルフィーユみたいに
幾重にも重なっているのが解るんだって。
その重なりの深さは地球から月までの距離より尚深いらしい。
そして名前を呼ぶ時、どの深さに呼ばわるかによって
この世界に現れるものも違うし、魔法の効果も変わるんだって。
だから、これからユギとぼくがどれだけ深くお互いを想いあったり
理解したいって思えるかが
ふたりの魔法のチカラを決めていくってことでもあるんだ。
傷ついていたり、自分には力が有るって
信じられずに自信が持てない人たちの中には
力づくでぼくたちを恭順させようとしたり
名前の秘密を明け渡すよう迫る人もいるけれど
それでは本当の力の源流には触れられないんだ。
気づいたかもしれないけれど
魔法には複雑なようでいて
ほんとはとてもシンプルな法則が働いているんだよ。
君たちもいつか相棒が見つかった時は
ただにっこり笑って、よろしく!って挨拶するところから始めるといいよ!
さあ、次からはいよいよユギとカゲユの冒険が始まるよ♪
《第三話》
ユギは少年の頃から好奇心旺盛で 能く星を読み
この世界の成り立ちや
人々が当たり前だと思っている常識や在り方に疑問を持っていたんだ。
だから6歳の頃には やがて自分は生まれ育った町を離れて
流浪の旅に出ることを悟っていたらしい。
その予感の通り
ユギが師匠の元を離れて旅に出たのは13歳の秋のこと。
それからずーーっと色んな町や村
時には魔境と呼ばれる地域を巡ってる。
そうそう!
この星の人たちの外見は 君たちとさほど変わらないけれど
歳の重ね方は君たちと違ってゆっくりなんだ。
君たちでいうところの青年期に達すると
外見の成長はゆっくりになる。
ユギも明るい亜麻色の髪にはしばみ色の瞳の
いつも口元に笑みを絶やさない朗らかな青年に見えるんだけど
地球人の年齢に換算すると
およそ80歳は超えたおじいちゃんなんだよ(笑)
と言っても
この星の人々の平均寿命は300歳だし
500歳は超えてる木だったボクから見たら まだまだひよっこだけどね。
さて そろそろ本題に入ろう。
ーーー
今 ユギとボクは
とある城砦都市の入り口から少し離れた場所で野宿してるところなんだ。
本当は日没の閉門までに城門をくぐりたかったんだけど
あるハプニングが有って町の外で一夜を過ごすことになったんだ。
ボクらは最初 城門をくぐる為の列にならんでいたんだけど
次々にみんなが町に吸い込まれていく中
荷台を引いたある一家が中に入ることを許されずに立ち往生していることに気づいた。
お父さんとおぼしき人が必死に頼み込んでいたんだけど
門番は頑として首を縦に振らなかった。
その理由は荷物の中身。
そこには小さな女の子とおばあちゃんが並んで寝かされていた。
二人とも苦しそうな様子で
特におばあちゃんの顔や身体には沢山の黒い痣のようなものが浮き出ていて
今にもこと切れそうなほど衰弱しているのが傍目にも解った。
お父さんとお母さんは 何とか二人を助けたくて
遠い村からお医者さんがいるこの町まで
必死に荷車を押してきたそうなんだ。
見たことのない奇病に冒された二人を見て
門番たちは伝染病を町に持ち込ませるわけにはいかないって思ったんだね。
必死に立ちふさがっていたよ。
そしてついに門番に詰め寄ったお父さんを
門番が持っていた警棒で打ち据えようとしたその時
見かねたユギが間に入って
医者の代わりに自分が二人を看るからと仲裁し 何とかその場を収めたんだ。
そこで最初のシーンに戻るってわけ。
一家を診たユギは ある驚くべき発見をするのだけれど
それはまた次のお話...
《第四話》
結論から言うと
女の子とおばあちゃんが罹っていた病気は
新しい病気や奇病なんかじゃなくて
森の奥深くに昔からあったものだった。
ユギは深い森の奥でこの病に罹っている動物を見かけたことが有って
その動物がランベルスという赤い実を食べて自分を癒しているのを目撃していたんだ。
普通は人間が罹ることはまず無い病気なんだけど
不作が続いていたその村の人たちは仕方なく普段は分け入らない森の奥深くまで
食べ物を探しに入ってそこで病気をもらっていたんだ。
早速ユギは
持っていた粘土とそのあたりに生えていたニガヨモギの葉を細かく砕いて練り合わせ
解毒薬を作って二人に飲ませてみた。
その後ぼくを使って二人の体内の水を清め
乾燥させて持ち歩いていたランベルスの実を二人に飲ませたところ
明け方には二人の様子は落ち着いてきたんだ。
実は今 世界規模でこの実がどんどん減ってきていることが解って
密かに魔道士達の間で噂になり始めていたんだ。
そこでユギもその謎を解くために村々をまわっていた矢先の出来事だったんだ。
ランベルスは別名「はじまりの木」と言われていて
この惑星では3度文明が滅びたんだけど
そのたびに何もなくなった大地に
最初に芽を出したのがこの木だといわれているんだ。
ランベルスは美味しくはないけれど とても栄養が有って
どこにでも生えているありふれた雑草なんだけど
本当ならこの時期にはまだ赤い実をつけているはずなんだよ。
実はランベルスにはもう一つ怖い言い伝えがある。
それは 人の心に暗い影が差し文明が滅びの道に向かいだすと
最初にこのランベルスが消えるっていうものなんだ...
つづく
《第五話》
翌朝峠を越えた二人の様子を確認したユギは
一家にこの後の養生方法を伝えてから
一足先に街へと向かうことにしたんだ
二人の治療を通して ユギは街ですべきことが
ランベルスについての調査以外にもう一つあることに気づいたんだって
それは町外れに住む とある女性を訪れることだった
城門を潜ってしばらく進むと 大きく聳え立つ時計台を中心に広場があった
そこには近郊の村々から集められた野菜や肉の他に
遠い砂漠を越えてもたらされた様々な宝飾品
まじない道具なんかが所狭しと並べられた賑やかな市がたっていた
ユギは人でごった返す市を両脇に見ながら
足早に広場を抜けて 入り組んだ石畳の道を進んでいった
広場の喧騒から離れるにつれ 辺りは静かになり
生活音や子どもたちの遊ぶ声も聞こえなくなり
ユギの履くブーツの音ばかりが響くようになった
やがて剝き出しの地面にたまった水たまりが点在する細い路地に出ると
薄い壁や窓枠からそっとこちらを伺ういくつもの視線がユギを絡めとり
皆一様にユギの手にあるボクをギラギラした目で見つめていた
ユギはみんなの好奇の視線を受け流しながら
更に道を進み 奥まった場所に建つ一軒の家の前で立ち止まると
小さなため息をひとつついて
意を決したように布張りの戸口の外から声をかけて中に入った
暗い部屋の中央に据えられた粗末な暖炉には薪がくべてあって
大きな鍋がかけられていて 嗅いだことのない異臭を放っていたんだ
そして鍋の傍らには一人の老婆が居て
ボクたちを見て ニタリと笑った
いつも穏やかな表情を崩さないユギだけど
この時だけは一瞬まるで何か痛みを堪えているような
怒っているような 複雑な表情を見せたんだ。。。
つづく
《第六話》
彼女の名はアムリア
かつては大陸でその名を知らない人はいないといわれていた有名な魔女だったんだって。
それがどうしてこんな町外れの粗末な掘立て小屋にいるのかはわからないけれど
どうやら彼女はユギの古い知り合いらしい。
アムリアはニタニタ笑いながら
ユギの訪いを知っていたことを奇妙に甲高いしゃがれ声で告げ
すすけて汚れた壺から 黒い立方体を取り出して 無造作にユギの足元へと放った。
ユギはその物体を拾い上げると
張り詰めた表情でアムリアを見つめ どこで見つけたのかを尋ねた。
アムリアによれば ここから5里ばかり離れた森の中に
それはある日突然ポツンと転がっていたらしい。
その立方体は「メンラル」と言って
「在り得ない物質」という意味なんだって。
世界図書館の禁書目録にある預言書によれば
世界の終息期の第二段階に出現し
日毎に数が増えていく物質で
この物質が増えるにしたがって
この世界を構成している魔素が減っていくと記されているらしい。
アムリアは
この世界の均衡がどんどん失われ
破滅に向かっていることを
ユギはとうの昔に知っていただろう?
何をいまさらそんな顔をしているのかと嗤った。
ユギは長い間黙っていたんだけど やがて小さくため息を吐いて
もう救う術はないのか と独り言のように呟いた。
それを聞いたアムリアは ひと声笑うと凄まじい表情で
とんだ茶番だね
と吐き捨てた。
アムリアにとってこの世界は醜悪で
リセットされたほうが余程この星にとっていいことだと思っているのが
その憎悪にギラついた眼差しから感じられたのだけれど
その理由はボクには全く見当もつかなかった。
自分と同じようにこの世界に捨てられた存在であるユギが
今もなおこの世界を憂い 想いをかけているのが
たまらなく苛立たしい とアムリアは言った。
ユギが捨てられた?
ボクは最初意味が解らなかったけれど
ボクを握るユギの手が ほんの少し冷たく硬くなったような気がしたんだ。
つづく
《第七話》
ユギは一瞬固まって、そのあと大きく息をひとつ吐くと
もういつもの柔らかだけど捉えどころのない表情を浮かべ、アムリアを真っ直ぐ見た。
自分の生き方を変えるつもりは無いこと。
それはアムリアも同じだろうと静かに答えて帽子のつばを直すと
アムリアに別れを告げた。
アムリアは口をへの字にしたあと、古ぼけた戸棚から
精巧な細工が施された銀の指輪を取り出し、ユギに渡した。
そしてここから20里ほど離れた水の都の王宮を訪ねるようにユギに告げた。
そこに行けば、この世界の異変の原因が解るかもしれない。
ただし、その王宮にはかつてユギと同じ日に生を受けた
はしばみ色の瞳の王子がいるし、ユギを棄てた父母とも再開しなくちゃいけない。
あるいは、再開する機会すら与えられず、命を奪われる可能性もある。
ユギばかりが理不尽に傷つき、危険を冒さなければいけない。
命までかけなければならない。そんな価値が今の世界にあるのか?
意地悪くアムリアはそう告げた。
「ボクはただ、知りたいだけさ。今何が起きていて、自分は何のために生きているのかを」
そう告げたユギには、もう翳りは一片も残ってないことが
僕を掴む手からも伝わってきたんだ。
つづく
《第八話》
水の都は一見美しく豊かな土地に見えた。
今まで旅してきたどんな町とも違っていて
もちろん僕は初めて訪れたんだけど
不思議なことに何だか懐かしいような
切ないような気持ちになったんだ。
町は整備された水路が縦横に走っていて
露店には瑞々しい果物や野菜が並んでいるし
街のいたるところに
美しい装飾を施された噴水が設置されていて
水の都にふさわしい景観を形作っていた。
ユギは鍔広の帽子を被り直し
市街地を見下ろすように聳え立つ
白亜の城の城門の前にたどり着くと
門番に首から下げた指輪を指し示し
開門を要求した。
驚いたことに
門番は予めユギの来訪を知っていたかのように
すぐさま重い扉を開いてユギを中に入れてくれたんだ。
中には細い通路が有り
城内への転送用の魔法陣が描かれている
円形のホールへとつながっていた。
そこでユギは、くだんの指輪を取りだし
僕の先っちょで軽く触れた。
途端に青白い光が指輪から染み出し
ぽたりと魔法陣に落ちると
呼応するように魔法陣も青白く光り輝いた。
そして一瞬の後には
王宮のとある一室にユギと僕は立っていた。
豪奢な装飾を施されたその部屋は
どうやら誰かの寝室のようで
寝台に横たわる誰かのそばには医師や女官
そして今にも泣き崩れそうな貴婦人と
それを支えるようにして立つ
どこかユギに似た風貌の男性がいた。
男性は青ざめた虚ろな表情で
ゆっくりとユギをその視線に捉えた。
つづく